蓄電池に関しては、3年前にマルチクライアント調査レポートを刊行している(「次世代電池の本命予想と材料ニーズ」)。リチウムイオン電池(LIB)を中心にした多角的調査(考察)であった。LIBの特長と課題などから、今後の伸びを予測するものであったとも要約される。
当時もLIBの電解質を固体化(全固体電解質)することによる革新的な研究発表があり、その動向が大変注目されていた。ただ、全固体電池の技術的ハードルは高く、本格的な実用化には時間がかかると見られていた。
しかし、本命的な用途と期待されている車載用途(BEV)はともかく、小型の情報端末的な用途では全固体電池は着実に採用が拡大している。特に日本のメーカーがこの点でリードしていることが実に心強いといえる。
問題は、需要サイズが桁違いに大きい自動車用途の全固体電池に関する冷静な(現実的)見方である。この点にフォーカスしたのが本資料の眼目になる。
本資料の主要な(中枢)部分は、第1部(特許解析から見える研究開発動向)になる。はじめにから始まって第1章から第6章までと、まとめでの総括的考察になる。これらの章では、膨大にある全固体電池などに関する特許情報を解析し、全固体電池の構成部材や周辺材料の技術動向を明らかにしている。
第2部(関連企業の開発動向と市場展望)として、全固体電池に関する主要部材などのニュース・リリースなど関連企業の開発動向と蓄電池や全固体電池の市場予測を追加した構成になっている。
全固体電池の分析はいわば旬の(タイムリーな)テーマであり各種のレポートが出ているが、他社にない独自の分析を行ったとの自負もあるので、是非この機会に手に取って頂きたいと考える次第である。
【推薦の言葉】
本資料集の特徴と実用性
KTR社から私に、標記の紹介文をとの依頼があった時、真っ先にこの分野の研究の第一人者のS教授にお願いした方が良いと申しあげた。ところが送られて来た見本誌を拝見して、考えが逆転した。これは現場技術者が、全固体デバイスの実用化に、即役に立てる内容である。本書の内容を理解するには、蓄電の電気化学の知識が必要であるが、有力各社の特許明細書の図を豊富に引用し、なかなか読み取り難い電極構造と、その特許上の効果、すなわち“進歩性”と“新規性”を的確に示している。
全固体セルの製造プロセスは、電解液系とは異なり、かなり多様性があるが、工業化が可能な主な方法は網羅されており、装置メーカーの参考にもなろう。
ここに示された日本の技術ポテンシャルを活かし、世界に先駆けてBEVに搭載可能な全固体セルの出現を期待したい。
菅原秀一 (元 三井物産(株)ナノテク開発部)
第1部 特許解析から見える研究開発動向
はじめに
1.全固体電池の概要
1-1 リチウムイオン固体電解質を用いた全固体電池とは
1-2 リチウムイオン電池の卓越した特性
1-3 全固体電池のプレイヤ-と特許情報まとめ
1-4 全固体電池/全樹脂電池/液系(現行)リチウムイオン電池の構成材料/特性比較
2.トヨタ自動車の全固体電池
2-1 トヨタ自動車のEV用電池戦略
2-2 トヨタ自動車の全固体電池の特許動向と技術概要
2-3 固体電解質材料
2-4 正極活物質
2-5 負極活物質
2-6 バインダー・導電助剤
2-7 電池構造(モノポーラ電極とバイポーラ電極)
2-8 スラリー
2-9 製造方法
2-10 集電体
2-11 タブ
2-12 外装部材
2-13 安全装置
2-14 評価・検知
2-15 制御装置/方法
2-16 実用化への課題と解決の方向性
3.全固体電池メーカー/材料メーカーの技術
3-1 富士フイルム
3-2 パナソニック
3-3 日産自動車
3-4 本田技研工業
3-5 出光興産
3-6 FDK
3-7 TDK
3-8 村田製作所
3-9 各社の構成材料比較
4.三洋化成/APB社の全樹脂電池
4-1 全樹脂電池の概要
4-2 全樹脂電池の詳細
5.液系(現行)リチウムイオン電池の製造方法革新/ドライ電極
5-1 液系リチウムイオン電池の製造方法課題
5-2 マックスウェル社のドライ電極・乾燥自立型電極フィルム
5-3 24エム・テクノロジーズ社のドライ電極・半固体電極
5-4 ドライ電極技術の可能性と全固体電池への適用
6.全固体電池の将来市場と可能性のまとめ
6-1 全固体電池の市場展開の可能性
6-2 全固体電池主要部材の可能性
6-3 周辺部材と装置の可能性
まとめ
第2部 関連企業の開発動向と市場展望
1.全固体電池の開発状況
1-1 News & 記事
1-2 公開特許
1-3 まとめ・考察
2.市場展望
2-1 蓄電池市場拡大の予測と前提
2-2 全固体電池の市場予測
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