新型コロナウイルス感染症の影響で現時点だけを見ると世界の航空業界、航空機業界は苦境にある。しかし、航空機用新素材は5年、10年をかけて開発するものであり、短期的な市場動向だけで新素材の開発可否を判断できるものではない。グローバル化の中で中長期的に航空機市場の成長は確実であり、地球環境対応の観点からも、燃費改善の観点からも航空機の軽量化は必須であり、航空機用材料の樹脂化・複合材料化は着実に進んでいくものと考えられる。
中でも、熱可塑性樹脂をマトリクスとするCFRTPは、①衝撃強度が高いという品質メリットだけでなく、②タクトの向上、③ロボット化適応、④歩留まりの向上等のコストメリットに加え、⑤環境対応としてのリサイクル性等、CFRPに比べてのメリットが注目を集め、今後の成長が期待される。
これまで、二次構造材として2002年就航のエアバスA340-600にPPS/CFのCFRTPが、一次構造材には2014年エアバスA350XWBにPEEK/CFのCFRTPが、そして2014年宇宙探査機の一次構造材にPEEK/CFがと、着実に実績を積み重ねてきた。これが、今後数量的拡大に結び付くと期待される。
さらに、これから出現する新市場としていわゆる「空飛ぶタクシー」が注目される。航空機ほど、高高度ではなく、高速でもなく、しかし、電動であるために軽量化要求が厳しい「空飛ぶタクシー」は、CFRTPのメリットが活きるターゲットの一つであり、航空機部品各社の期待も大きい。
本資料集は、カワサキテクノリサーチの樹脂、素材、複合材料の専門技術者たちが議論と検討を重ね、構造材用のCFRTPを中心に、PAEK(PEEK、PEKK)、中間膜を含む窓材、断熱遮音材、保護パイプ、塗料等、今後市場が拡大することが期待される航空機用有機材料に注目、技術と市場を俯瞰すると共に今後の動向を解析、予測した内容を、わかりやすく解説した。航空機用有機材料に注目する研究開発マン、企画マン必読のレポートである。
第1章 はじめに
第2章 航空機業界の現状と今後の見通し
1 旅客機、貨物機市場の現状と見通し
2 航空機メーカーの動向
3 航空機部品業界の現状と見通し
第3章 航空機構造材料へのCFRPの採用拡大
1 航空機の構造とCFRP化
2 航空機材料の耐火性要求
3 航空機用複合材料のコスト
4 先行するエアバス、追うボーイング
5 熱可塑性微粒子の活用
6 エンジン部品のCFR(T)P化
7 炭素繊維メーカーの動向
8 CFRPの環境対応への研究開発
第4章 航空機構造材料へのCFRTPの採用
1 UDテープ、オルガノシート、LFT、コンパウンド
2 CFRTPのメリット(CFRPとの比較)
3 CFRTPの製法(欧米と日本の違い)
4 各マトリクス樹脂の特徴
5 機体へのCFRTTP採用状況
6 LFT、コンパウンドの用途展開
7 CFRTPマトリクス樹脂メーカー各社の動向
第5章 期待される「空飛ぶタクシー」の新市場
1 「空飛ぶタクシー」とは
2 各社のeVTOL開発状況
3 構造材に期待される性能
第6章 窓材
1 航空機の窓
2 操縦席窓材
3 客室窓材
4 中間膜
5 ボーイング旅客機の窓と中間膜
6 エアバス旅客機の窓と中間膜
第7章 断熱遮音材と内装材料
1 断熱遮音材
2 内装材
3 接合材
第8章 塗料
第9章 その他
アウトプットイメージ